はこねらりっくびじゅつかん【箱根ラリック美術館】
19世紀末から20世紀初頭にフランスで活躍したジュエリー・ガラス工芸作家として、日本でも人気の高いルネ・ラリック。美しい芝生の庭園が広がる「箱根ラリック美術館」は、2005年、オーナーが個人で蒐集したラリック作品のコレクションを元にできた美術館です。そのコレクションはなんと1500点。
この中から、厳選された作品が、常時230点ほど展示されています。
常設展で見られるのは、ジュエリーや香水瓶、花器などの作品。
ルネ・ラリックは20歳ほどの若さでカルティエやブシュロンなどの一流宝石店から依頼を受けるほどの成功をおさめていたジュエリーデザイナー。1900年にパリで行われた万国博覧会で大ブレイクした彼の作品は、「宝飾品=宝石の価格」という時代のなかで、デザインで勝負し、ガラスや七宝も使い新しいジュエリーの価値を生み出したのだそう。
フランス19世紀末の「ベル・エポック」という時代を象徴する女優、サラ・ベルナールも彼のファンの一人。舞台で使う装飾もラリックに依頼していたといいます。
その後、香水のラベルデザインの依頼に対して、自らボトルデザインも行い、美しいガラスの香水瓶を生み出すと、たちまち人気を博しました。ガラス工芸家へと転身したラリックは香水瓶や花器、ランプだけではなく次第に室内装飾まで手がけるようになりました。
箱根ラリック美術館でいちばんの人気が、ポスターなどにも使われているブローチ「シルフィード」。実物は高さ4センチほどのサイズですが、色鮮やかな七宝焼きにダイヤモンドをちりばめた繊細な美しさに魅了されてしまいます。
実際に走っていたオリエント急行の車両も展示
ガラス工芸家として大きな室内装飾も手がけていたラリック。その傑作が、オリエント急行の車両です。1929年に、パリとフランス南部を結ぶ豪華列車「コート・ダジュール号」が開通した際に、その車内装飾を行ったのです。その後、オリエント急行と名前を変え、2001年まで現役で走っていた車両が、箱根ラリック美術館に特別展示されている「ル・トラン」です。
室内に張り巡らされたガラスパネルや天井の照明は、ルネ・ラリックが68歳のころの作品。
この展示車両だけで156枚も使われているというパネルは、よく見ると裏側に銀を塗った鏡面加工を施されています。これで光を反射させることで、室内を明るく、広く見せる効果があり、さらにこれまでにない贅沢な空間の鉄道の旅を楽しめたのです。車両の入場は別料金ですが、中では本格的なカフェメニューを味わうことも(1時間につき20名限定。当日現地での受付のみ)。
2017年12月8日、アガサ・クリスティの名作『オリエント急行殺人事件』の新作映画が公開されますが、映画の日本語版吹き替えのCM撮影が行われたのもこの車両。現在、映画にあわせてパネル展示が行われ、車内では特別メニューを味わえます。
シャンパーニュが豊富なカフェレストランも魅力
美術館に入館をしなくても利用できるカフェ・レストランが「LYS(リス)」。ラリックが多くの作品に登場させ、フランスの国花でもある「ユリ」を意味する名前で、「フランス・パリ郊外の明るいレストラン」をイメージして作られたのがこちらです。
中庭に面したテラス席や、大きな窓を持つ明るい店内で食べられるのは、四季ごとに変わるメニュー。写真の料理は2017年秋のもので、自家製のローストポークにカラスガレイのフリット、ジャガイモとベーコンのオーブン焼きを添えたセット。味も本格的で、ライ麦パンにあわせるオリーブオイルひとつとっても、4種のハーブを漬け込んだ自家製のもの。
デザートも企画展にあわせて用意されます。
実はルネ・ラリックはフランス・シャンパーニュ地方の出身です。多くの方はご存じかとは思いますが、本来、シャンパンというのは、シャンパーニュ地域で、決められた製法で醸造されたものだけが名乗れる名称。このレストランではラリックの出身地で作られたシャンパンを数種類用意しているので、優雅なランチにあわせてぜひどうぞ。
また、美術館の営業する9時からオープンしていて、朝食を食べることも(LO10:00)。卵料理のプレートにパンやプチサラダ、ヨーグルトなどが付いたモーニングセット1,300円でお腹を満たしてから、仙石原の観光をスタートさせるというのもおすすめです。
(2019年11月現在の情報です)
住所 神奈川県足柄下郡箱根町仙石原186番1
電話 0460-84-2255
開館時間 9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日 無休(展示替えのための休館あり)
入館料 大人1,500円
アクセス 箱根湯本駅から箱根登山バス「湖尻・桃源台」行きで 約30分、「仙石案内所前」下車すぐ。箱根本箱から車で約15分
公式サイト http://www.lalique-museum.com